漢字 | 読みかた |
洋琴 | ようきん |
ピアノは漢字で『洋琴(ようきん)』と書きます。
ヨーロッパを表す「洋」と、楽器の「琴」を組み合わせた表現ですね。
この記事では次の内容をまとめています。
- ピアノはなぜ『洋琴』?「洋」と「琴」に分けて解説
- ピアノ以外の楽器を漢字にしたらこうなる:全27種類
是非続きをご覧ください。
ピアノはなぜ『洋琴』と書くのか?
ピアノを漢字で書くと『洋琴』。ここまでは分かりましたね。
なぜ、ピアノが『洋琴』になるのでしょうか?
『洋琴』を分解すると「洋」と「琴」になります。
「洋」と「琴」に分けてピアノを漢字にすると『洋琴』になる理由を説明していきます。
「洋」が表す意味・由来
「洋」を含む言葉は、アメリカやヨーロッパから日本に来た「もの」や「こと」がほとんどですね。
参考に「洋」を含む言葉を少し並べてみます。
洋菓子 | 洋酒 | 洋食 | 洋室 |
洋式 | 洋梨 | 洋風 | 洋書 |
日本にピアノが伝えられたのは江戸時代の1823年で、オランダから持ち込まれたとされています。
当時の日本は鎖国中で、唯一外交を許されていたのがオランダでした。
オランダはヨーロッパの国のため「洋」という表現を使ったのが『洋琴』の一文字目「洋」の由来です。
「琴」が表す意味・由来
「琴」という文字は、琴(こと)を始めとする様々な楽器で使われています。
真っ先に日本の伝統楽器が浮ぶと思いますが、「弦楽器」「鍵盤楽器」という意味も持っています。
弦楽器 | 弦の振動を音とする楽器 |
鍵盤楽器 | 鍵盤を操作することによって演奏する楽器 |
ピアノの内部にはたくさんの弦が張られおり、鍵盤を叩くことで中でつながったハンマーが弦を叩いて音を出します。
「弦楽器」「鍵盤楽器」の両側面を持ちあわせているピアノは、正真正銘「琴」であることが分かります。
ピアノ以外の楽器を漢字で書くとこうなる(27種類)
ピアノ以外にも、外国から日本にきたカタカナで書く楽器はたくさんあります。
それらは漢字でどのように書くのか、参考に27種類の楽器をあげてみました。
楽器を漢字にすると「琴」を使うケースが非常に多いです。
先ほど説明した「弦楽器」「鍵盤楽器」に当てはまるものには、ほぼ琴が含まれているのがわかります。
楽器名 | 漢字 |
ピアノ | 洋琴 |
オルガン | 風琴 |
パイプオルガン | 管風琴 |
エレクトーン | 電子琴 |
アコーディオン | 手風琴 |
シロフォン | 木琴 |
グロッケン | 鐵琴 |
マリンバ | 馬林罵巴琴 |
オルゴール | 自鳴琴 |
カリンバ | 非洲木琴 |
ギター | 六弦琴 |
ヴァイオリン | 提琴 |
チェロ | 大提琴 |
ビオラ | 中提琴 |
コントラバス | 低音提琴 |
ハープ | 竪琴 |
ウクレレ | 尤克里里琴 |
モリンホール | 馬頭琴 |
ハーモニカ | 口風琴 |
オカリナ | 鳩琴 |
ラッパ | 喇叭 |
チューバ | 低音大喇叭 |
トランペット | 小號 |
トロンボーン | 長號 |
フルート | 長笛 |
リコーダー | 木笛 |
トライアングル | 三角鉄 |
カスタネット | 響板 |
ほぼ当て字のため、楽器の名前と漢字の発音は大きく異なるものが多いです。
日本語の漢字表記というよりは、中国から伝わってきた表現が多く日常的にはあまり使われていません。
~さいごに~ 『洋琴』にまつわる2つのコラム
最後に、『洋琴』に関する2つのコラムをご紹介してこの記事を締めていきたいと思います。
- 「和」と「洋」で対になる言葉
- 中国語では『洋琴』と書かない
「和」と「洋」で対になる言葉
ピアノを漢字で書くと『洋琴』。この「洋」という言葉に対し、日本を表す「和」という言葉があります。
そこで「和」と「洋」が対になっている10個の言葉とその意味をご紹介します。
和 | 洋 | ||
和琴 | 神楽・東遊 (あずまあそ) びなど、雅楽の日本古来の歌舞に用いる6弦の琴 | 洋琴 | ピアノのこと (中国の打弦楽器、という意味も持つ) |
和風 | 日本古来の風俗・様式、日本風 | 洋風 | 西洋的な形式であること、洋式、西洋風 |
和食 | 日本風の食事、新鮮な魚介や野菜を用い、材料の持ち味を生かして調理すること | 洋食 | 西洋風の料理や食事、西洋料理 |
和装 | 和服を着ていること、和服姿 | 洋装 | 西洋風の服装をすること、その服装 |
和服 | 日本に古くからある様式の衣服、着物 | 洋服 | 西洋風の衣服、背広・ズボン・ワンピース・スーツ・スカートなど |
和裁 | 和服の裁縫 | 洋裁 | 洋服の裁縫 |
和室 | 日本風の部屋、日本間 | 洋室 | 日本風の部屋、日本間 |
和書 | 日本の書籍、日本語で書かれている書物 | 洋書 | 西洋の書籍、西洋で出版された書物、洋本 |
和紙 | ミツマタ・コウゾ・ガンピなどの靭皮 (じんぴ) 繊維を原料として、手漉 (す) きで作る日本古来の紙 | 洋紙 | 西洋から伝わった製法で作った紙、木材・わら・ぼろなどのパルプおよびくず紙を機械的、化学的に処理して作る |
和式 | 日本風の様式、和風、日本式 | 洋式 | 西洋風のやり方・様式、西洋式、洋風 |
この「和」と「洋」の流れから少し外れますが
「日本酒」と「洋酒」、「邦画」と「洋画」、「邦楽」と「洋楽」など日本とアメリカやヨーロッパを比較する様々な言葉があります。
なぜ「和」が使われていないのかをひも解いていくと、その時代背景が見えてくるなど面白い発見があるかもしれませんね。
中国語では『洋琴』と書かない
今回ご紹介した、ピアノを漢字で表した『洋琴』は日本語です。
ピアノを中国語で表すと「钢琴」(gāngqín)となり(日本の漢字を使うと「鋼琴」)『洋琴』とは書きません。
『洋琴』は中国語由来の「洋」という言葉と、日本語の「琴」を組み合わせたものです。
昔の中国語では「洋」という言葉を「西洋」「東洋」として区分し、以下のように使っていました。
西洋 | 西の海外 | ヨーロッパ |
東洋 | 東の海外 | 日本 |
その後「洋」は、中国から見た遠い海外の意味に変わり、最終的にヨーロッパを指すようになりました。
ちなみに、中国にはピアノとは別の『洋琴』という楽器が存在しています。
1 中国の打弦楽器。扁平な箱状の木製胴の上に多数の真鍮(しんちゅう)弦を平行に張り、2本の竹製の細い棒(琴竹)で打奏する。大きさ・弦数などは多様。朝鮮を経て、19世紀中ごろに日本に伝来した。
2 ピアノのこと。
中国由来の『洋琴』は、明清楽 (みんしんがく) の楽器として江戸時代末に日本に入ってきましたが現在は使われていません。
最後までご覧いただきありがとうございました。