『四六時中(しろくじちゅう)』は、「一日中」「いつも」「ずっと」を意味する言葉です。
その語源は、江戸時代に使われ始めた『二六時中』から来ています。
この記事では
- 『四六時中』の意味と語源
- 「四六」の表現は江戸時代の「しゃれ文化」からきていた
について解説しています。
気になる方は是非続きをご覧ください。
『四六時中』の意味と使い方
『四六時中』は2020年に大ヒットした人気アニメ「鬼滅の刃」でも登場する言葉です。
なんとなく意味は分かっているつもりだけど、違っていたら困るし積極的には使わない。
そんな『四六時中』の意味や使い方を理解できるようご案内していきます。
『四六時中』の意味
「一日中」 「いつも」 「ずっと」
なぜ『四六時中』がこのような意味を表すかは、「四六」の部分を理解することで解決します。
『四六時中』の「四六」は、掛け算の「4×6」からきています。
4×6=24 → 24時間 ということですね。
『四六時中』→「24時間ずっと」→「一日中」・「いつも」という解釈になるわけです。
ここまで分かれば『四六時中』を様々なケースで使ったり理解することできますね。
引き続き使い方を見ていきたいと思います。
『四六時中』の使い方
『四六時中』は、どのように使えば良いのでしょうか?
『四六時中』は
四六時中〇〇する という形で使います
誰もが知っている、あの大人気アニメの中でも登場する言葉です。
全集中の呼吸を四六時中やり続けることにより
基礎体力が飛躍的に上がります出典:鬼滅の刃 「胡蝶しのぶ」のセリフ
「ずっと○○している」ことを、『四六時中』を使って表現することができます。
いくつか使用例をあげてみます。
『四六時中』の使用例
|
このように、「ずっと〇〇していて素晴らしい」「ずっと〇〇していて良くない」のように使います。
『四六時中』は、肯定的な意味でも否定的な意味でも使えますね。
『四六時中』の語源
最初にお伝えした通り、『四六時中』の語源は『二六時中』という言葉です。
『四六時中』が使われ始めるまでは、同じ意味で『二六時中』が使われていました。
『四六時中』が言葉として使われ始めたのは、1872年(明治5年)以降。
なぜ『二六時中』が『四六時中』に変わったのか?一緒に見ていきましょう。
『四六時中』の語源は『二六時中』
■『四六時中』は日本で24時制が導入されてから使われ始めた |
『四六時中』が使われ始めたのは明治時代。もともと存在した『二六時中』の意味を引き継ぎました。
そのきっかけは、日本の時間制度が変わったことでした。
1872年(明治5年)に、日本国内で24時制が導入され「12刻」から「24時間」に
「四六」の数字の意味は、「四六二十四(しろくにじゅうし)」でした。
「12刻」が「24時間」に変わったことで、「二六」を「四六」に変えたのですね。
『二六時中』 | 『四六時中』 | |
言葉の意味 | 「二六」2×6=12 | 「四六」4×6=24 |
日本の時刻制度 | 12刻 | 24時間 |
ここまで聞くと、『二六時中』が語源であるという流れも納得できます。
その後、1876年には【日本国語大辞典(日国)】において『四六時中』の用例が記載されています。
1872~1876年までの間に使われ始めたことが分かります。この時代が出発点となったわけです。
語源となった『二六時中』について
■『四六時中』はもともと『二六時中』だった。 |
『二六時中』の由来は、江戸時代の時刻の制度に関係しています。
「日の出」と「日没」を境に昼と夜をそれぞれ六等分し、12刻という単位で1日を表していました。
【1日は12刻である】という考え方から生まれた言葉が『二六時中』なのです。
「二六」の数字の意味は、「四六」の時と同様で「二六十二(にろくじゅうに)」です。
この12刻のことを、「十二辰刻(じゅうにじしん)」「十二刻」「十二時」などと呼びます。
十二時辰(じゅうにじしん)とは、近代以前の中国や日本などで用いられた、1日をおよそ2時間ずつの12の時辰(じしん)に分ける時法である。“およそ2時間”とあるのは、後述の通り夜と昼、季節で長さが変動するからである。
(中略)
十二時辰のそれぞれには「夜半」等の名があるが、十二支(子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥)でも呼ばれる。その場合、漢語では「子時(しじ)」などと呼ぶが、日本では「子の刻(ねのこく)」「子字」などと呼ぶのが普通である。
引用 : Wikipedia 十二時辰
【十二時辰の時間表現は次のようになります】
24時制 | 12刻 | 24時制 | 12刻 |
0時 | 子の刻 | 12時 | 午の刻 |
2時 | 丑の刻 | 14時 | 未の刻 |
4時 | 寅の刻 | 16時 | 申の刻 |
6時 | 卯の刻 | 18時 | 酉の刻 |
8時 | 辰の刻 | 20時 | 戌の刻 |
10時 | 巳の刻 | 22時 | 亥の刻 |
※表内では正刻を表記。正刻とは2時間の幅がある刻の真ん中の時間。
語源となった『二六時中』は「12刻」がベースになっていたことが分かります。
この『二六時中』が、後に24時制の導入によって『四六時中』に変わっていったのです。
「四六」の由来は江戸時代の「しゃれ」文化
「四六」や「二六」のように、数字二文字が言葉の頭につくものが昔から多く存在します。
落語でも使われるなど、江戸の庶民文化の典型である「しゃれ」を意識した文字遊びからきているとされています。
「かけ算」の他にも、「たし算」や「12刻」を使ったものがあります。
江戸時代の意外な一面が様々な言葉から垣間見ることができます。
そんな「おしゃれ」な言葉たちを少しご紹介します。
江戸時代に使われていた「おしゃれ」な言葉たち
先程からお伝えしてきた通り、もともとある言葉を「しゃれ」で言い換える文化がありました。
それらは、もとの言葉を語呂で数字に置き換えたものや、もともと数字が使われていた表現など多岐に渡ります。
そんな言葉たちの中からいくつかご紹介します。
意味 | 詳細 | |
四六時中 | 一日中 | 4×6=24時間 |
三五夜 | 十五夜 | 3×5=15 |
二八そば | 16文で買えるそば | 2×8=16文 |
二六うどん | 12文で買えるうどん | 2×6=12文 |
おやつ | 八つ時(13〜15時)にとる小食 | お八つ |
十三屋 | 櫛(くし)屋 | 9+4=13 (「四」と「九」を嫌った) |
七ツ屋 | 質屋 | しち→7 |
三五の歳 | 15歳 | 3×5=15歳 |
二八の歳 | 16歳 | 2×8=16歳 |
ここにあげたもの以外にもたくさんの表現が存在しています。
色々と調べていくと、なるほどと感じる面白い使い方がたくさん発見できるかもしれませんね。
『四六時中』とは異なり意味が変わった言葉
最後に、先程の事例で紹介した『二八そば』に関するエピソードをひとつご紹介します。
「二八そば」は、当時の物価統制で16文と決められていた「そばの値段」がルーツ。
しかし、物価上昇による値上がりで20文となったことから、「そば粉8割・小麦粉2割」のそばを表す言葉にその意味が変わっていきました。
『四六時中』のケースを考えると、「四五そば」(4×5=20)などになっても良さそうですが、「言葉」ではなく「意味」が変わったのですね。
『四六時中』『二六時中』のみならず、江戸という時代背景が様々な言葉に影響を与えていた事実はとても面白いですね。
最後に
今回は、『四六時中』の意味と使い方から、語源となった『二六時中』の由来、江戸時代の「しゃれ」文化の影響という流れでご案内してきました。
その内容に「なるほど」と思っていただければ幸いです。
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