『孫の手』の由来は【麻姑(まこ)の手】
中国の伝説に登場する「麻姑」という美女の手がもとになっています。
『孫の手』の語源・由来をほとんどの人は知らない!
『孫の手』という言葉が「孫」に由来していると思っていた人はぜひ続きをご覧ください。
こちらの記事では『孫の手』の語源・由来について次の内容をまとめています。
- 『孫の手』の元々「麻姑(まこ)」だった
- 「麻姑」とは中国の歴史上の美女のこと
- 「孫」に関連する勘違いしやすい言葉
『孫の手』の語源・由来
竹材などの先端を手の形にした『孫の手』は背中をかく時などに手が届かない箇所に対してつかう便利な棒です。
『孫の手』の一般的なイメージ
あなたは『孫の手』という言葉の由来が、「孫」の「手」から来ていると思っていませんか?
しかし、実は『孫の手』と「孫」は全く関係がないというのが今回のお話です。
『孫の手』の呼び名は「まごのて」ではなかった
それでは、孫の手の「孫」とは、いったい何を指しているのでしょうか?
実は、孫の手の「孫」は、実際には「麻姑(まこ)」と書くのが正しかったという事実があります。
『まごのて』ではなく「まこのて」が正しい呼び名だったわけです。
「まこ」が『まご』に変化していったのです。
「麻姑」とは中国の伝説に登場する美しい仙女のことであり、この「麻姑」が由来になっています。
「麻姑」は中国の伝説に登場する美しい女性のこと
『孫の手』は中国の伝説「神仙伝」に登場する仙女「麻姑(まこ)」に由来しています。
「麻姑」とは、桓帝(かんてい)の時代に登場する若くて美しい女性のことです。
”彼女(麻姑)の鳥のように長い爪で背中をかいてもらうと、とても気持ちがよかった”という逸話があります。
この逸話が日本まで伝わり、背中をかくための棒のことを「麻姑の手」と呼ぶようになりました。
そして、いつしか言語の語呂が「麻姑の手」から『孫の手』という呼び名に変わっていったのです。
1712年に出版された百科事典『和漢三才図会』によると、『孫の手』は「爪杖(そうじょう)」とも呼ばれています。
「爪杖」の解説には「桑の木を使って手指の形を模ったもの。自分の背中を掻く道具。これを麻姑の手という」と書かれています。
麻姑が登場する言葉の例え
中国には、物事がうまく思いどおりに運ぶことの例えとして「麻姑を倩(やと)うて痒(かゆ)きを掻く」という諺(ことわざ)があります。
《麻姑にかゆい所をかいてもらうと、気持ちがいいことから》物事が思いのままになること、また、思いどおりに事が運ぶことのたとえ。麻姑掻痒 (そうよう) 。
出典:小学館 デジタル大辞泉 「麻姑を倩うて痒きを掻く」より
辞書の解説の中にも「麻姑」の存在と「痒い所をかく」のが上手であるという表現があり、その存在がしっかりと確認できます。
『孫の手』は英語で「バックスクラッチャー」
痒いところに手が届かないということは人類共通の悩みであったようで、孫の手のような道具は世界各国に存在しています。
ちなみに、孫の手のような道具を英語では“backscratcher(バックスクラッチャー)”、“scratch-back(スクラッチバック)”と言います。
backscratcherの発音は こちら から確認できます。
さいごに
「美人仙女の手」が、「孫の手」へと変わっていく。 歴史とともに変化していく言葉って、おもしろいですね。
話は変わりますが、私が以前書いた記事の中に『馬子にも衣装』の意味について解説したものがあります。
この『馬子にも衣裳』も「孫」と勘違いしやすい言葉の一つです。
『馬子にも衣装』の「馬子」は、馬に人や荷物を乗せることで賃金を得る「身分の低い」職業のことなのです。
気になった方は、是非こちらもご覧ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。